「空き家差し上げます」という、タダでもらえる空き家は実在します。
正式名称でいうと、そうした物件は「無償譲渡物件」といい、実際に自治体やマッチングサービスで見つけることができます。
しかしながら、実は、無償譲渡物件といいつつも、手続きや譲渡後には税金や手続きや改修費などのまとまったお金が必要になります。
0円で空き家をもらっても、全くお金がかからない訳ではないのです。
そればかりか、無償譲渡物件の取引にはトラブルも多いため、安易な気持ちで0円物件に手を出してしまうと後悔する羽目になりかねないため注意が必要です。
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不動産一括査定サイトの評判を確認したい方は以下の記事も参考にしてみて下さい。
この記事では、「空き家差し上げます」という無償譲渡物件の裏に隠れる注意点や、成功事例・失敗事例、そして後悔しないための対策方法まで詳しく紹介していきます。
良い面も悪い面も知った上で、リスクを回避して理想の0円物件を探してみてください。
空き家0円物件についてはニュースでも取り上げられているので、参考にしてみてください。
→【空き家問題(LBS)】0円で譲渡できる不動産サイト「みんなの0円物件」
「空き家差し上げます」物件とは
「空き家差し上げます」物件は本当に存在するの?と思っている方もいるかもしれませんが、実際に、無償で取得できる空き家は存在します。
ここでは、以下のようなポイントについて解説していきます。
「土地と建物の無償譲渡」という取引に該当
=タダ(無料)で土地と建物をあげること
自治体の「空き家バンク」や「みんなの0円物件」のようなマッチングサイト
「空き家差し上げます」が多い地域はどこ?
「空き家率」が高いエリア
長野県軽井沢町、栃木県那須町、静岡県熱海市、千葉県勝浦市など
「空き家差し上げます」とは結局どういうこと?
通常、土地や建物を取引する場合には「不動産売買」という取引になりますが、「空き家差し上げます」は「土地と建物の無償譲渡」という取引に該当します。
土地と建物の無償譲渡とは、タダ(無料)で土地と建物をあげることをいいます。
個人と個人でやり取りする場合には、売買ではなく「贈与」と同じ扱いになります。
「空き家差し上げます」の情報はどこで見つかるのか?
昨今は、過疎地などを中心に空き家が増えてきており、「タダでいいからもらってほしい」という所有者が多く存在しています。
そして、そうした無償譲渡の希望をマッチングさせる仕組みも登場しているのです。
例えば、東京の奥多摩町や富山県上市町では、自治体で「0円空家バンク」を設置して物件をタダで手放したい人と活用したい人のマッチングを促進する事業を行っています。
また、詳しくは後述しますが、「みんなの0円物件」のような無償譲渡物件ばかりを掲載したマッチングサービスも数多く登場しています。
例えば「みんなの0円物件」には、2023年12月時点で、875件の無償譲渡物件が見つかります。
これは空き家だけでなく土地やマンションも含めた件数ですが、多くの無償譲渡物件が存在していることが分かるでしょう。
「空き家差し上げます」が多い地域はどこ?
「空き家差し上げます」の物件は日本全国さまざまな場所に存在していますが、特に「空き家率が高い」地域に多く存在しています。
その理由としては、空き家が多いエリアは、空き家を売却しようとしても買い手がなかなら見つからないからです。
「買い手が見つからないけれど手放したい」という場合は、無償で譲渡することが最終手段として行われるのです。
例えば、長野県軽井沢町、栃木県那須町、静岡県熱海市、千葉県勝浦市など、空き家率が高いエリアでは、空き家の需要が低いため、「空き家差し上げます」物件も多く見つかります。
なぜ0円?「空き家差し上げます」が実在する理由
実際に「空き家差し上げます」物件が掲載されているところを見ても、「なぜ無料で家を手放す人がいるんだろう?」「タダでもらえるなんて何か裏がありそうで怖い」と感じる方がいるかもしれません。
ここからは、なぜ無料でも空き家を手放したい人がいるかを解説していきます。
【前提】空き家を売却しようとしても売れなかったから
「空き家を差し上げます」の前提には、空き家を手放したいオーナーさんが、売却しようとしても売れなかったという事情があります。
通常、住まなくなった家を手放す場合には、その家を中古物件として売却するのが一般的です。不動産査定を行い、不動産会社と契約して、不動産サイトに掲載して売買が成立します。
しかしながら、誰も買い手が見つからない場合には、手放すために「無料でいいから誰かにあげよう」と考えるオーナーさんが出てくるのです。
空き家を解体するには100万円以上の費用がかかるから
なかなか空き家が売れない場合に、次の選択肢として「空き家を取り壊して、更地にして売却する」というものがあります。
空き家が古い場合などは「古家付き土地」として売却するよりも、更地(何も建っていない土地)にした方が、購入者が自由に活用できるため買い手が付きやすいといわれています。
しかしながら、空き家を解体して更地にするには100万円〜500万円ほどの費用がかかります。
解体費用が高額になること、そして更地にしたからといって売れる保証がないことから、空き家を解体せず「このまま誰かに0円であげてしまおう」というオーナーさんが多く存在するのです。
空き家は持っているだけで数十万円の維持費がかかるから
「0円であげるくらいなら自分で持っていればいいのではないか?」と考える方もいるかもしれません。
しかしながら、空き家は持っているだけで維持費がかかります。
空き家を維持するためにかかる費用は、年間約10万円~35万円程度です。
【空き家を維持するための費用】
項目 | 内容 |
---|---|
固定資産税 (+都市計画税) | ・不動産を所有している場合にかならず納める税金 ・土地と家屋の場合は、両方に対して固定資産税が発生する ・市区町村が定めた評価額に応じて、支払う税額が決まる ・土地と家屋の固定資産税は、年間10万円~15万円程度が一般的 |
火災保険料 | ・保障内容や契約期間によるが、年間数万円~数十万円程度の保険料が必要 |
修繕費用・維持費用など | ・周りに迷惑をかけるようなケースでは修繕費用・維持費用が必要 (庭木が伸びてきた、ブロック塀が破損した、家屋が倒壊したなど) |
持っているだけで維持費がかかり、収支はマイナスとなります。
そのため、0円でもいいから早く手放したいと考える方も多くいるのです。
さらに法改正で固定資産税が6倍に上がる可能性があるから
さらに、2023年に「空家等対策特別措置法」が改正されたことにより、空き家をそのまま持ち続けるためのコストはさらに上がる可能性があります。
「空家等対策特別措置法」改正によるコストの増加
・現在適用されている「固定資産税の住宅用地特例(評価額が6分の1に減額される措置)」の適用が無くなり、固定資産税が最大6倍になる可能性がある
・国や自治体に「管理不全空家等」として指定されてしまうと、定期的な喚起や庭木の伐採など、管理指針に即した措置を行わなければならなくなる
固定資産税が最大6倍に上がる可能性があるだけでなく、管理指針に即した措置を行わないで無視していると、50万円以下の過料が科せられます。
空き家を持ち続けると赤字が増えるだけなので、0円でも誰かにもらってもらいたい!というオーナーさんが多くいるのです。
空き家の値段は0円でも税金や諸費用が結構かかる
「空き家差し上げます」物件を0円でもらい受けた場合、元の所有者に支払うお金は0円です。
しかしながら、取得時には以下のような諸費用が発生するので注意が必要です。
【空き家を0円でもらった場合にかかる費用】
項目 | 内容 | 内容 |
---|---|---|
贈与税 | 財産を「あげます」「もらいます」という合意があった場合にかかる税金 | ・税率は評価額によって変動 ・土地と家屋の合計評価額が1,000万円なら (1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円 |
不動産取得税 | 売買や贈与などで不動産を取得した場合にかかる税金のこと | ・宅地の不動産取得額:固定資産税評価額×1.5% ・家屋の不動産取得額:固定資産税評価額×3% ・土地と家屋の合計評価額が700万円+300万円なら、10.5万円+9万円=19.5万円 |
贈与登記 | 贈与による所有権移転登記の手続きに必要な費用 | ・登録免許税:固定資産税評価額×2% ・司法書士手数料:4万円程度 |
無償譲渡契約書(贈与契約書)の書類作成費 | 無償譲渡契約書(贈与契約書)の書類を作るために司法書士に依頼する費用 | ・数万円が相場 ・贈与登記もセットで依頼する場合には10万円程度 |
修繕・リフォーム費用 | もらった空き家を修繕したりリフォームしたりするためにかかる費用 | 長年使ってなかった家をフルリフォームする場合には、1,000万円以上など大規模な修繕が必要になるケースもある |
例えば、譲り受けた土地と家屋の固定資産税評価額が合計1,000万円で、リフォームに500万円かかる場合の費用の合計は以下です。
贈与税231万円+不動産取得税19.5万円+贈与登記の登録免許税20万円+契約書と登記を司法書士に依頼した場合の費用10万円+リフォーム費用500万円=780.5万円
なお、空き家を取得した後は毎年、「固定資産税(課税標準額の1.4%)」や「都市計画税(課税標準額の0.3%)」もかかるので、そちらも念頭に置いておくようにしてください。
以下から、無償で空き家を譲り受けた場合の取得時にかかる諸費用のそれぞれの詳しい解説をしていきます。
贈与税が課せられる
贈与税は、個人間で、財産を「あげます」「もらいます」という合意があった場合に課税される税金です。
贈与税は、財産の評価額から110万円を超えた金額に、一定の税率をかけた金額を支払います。
つまり、空き家の場合、土地と家屋の固定資産税評価額が110万円を超えた場合に発生します。
税額は、財産の評価額によって変わるので、詳しくは国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」をご覧ください。
※個人から法人に空き家を無償譲渡した場合には、「みなし譲渡」という取り扱いになり、譲渡した個人に「所得税」、受け取った法人には「法人税」がかかります。
同様に、法人から個人への無償譲渡は、譲渡した法人が「法人税」を、受け取った個人は「所得税」を支払います。
また、法人から法人への無償譲渡の場合には、両者に「法人税」を納める義務が発生します。
不動産取得税がかかる
不動産取得税は、土地や家屋を取得した場合に、取得した人が支払う税金です。
宅地の不動産取得額 | 固定資産税評価額×1.5% |
---|---|
家屋の不動産取得額 | 固定資産税評価額×3% |
贈与登記の費用がかかる
空き家を0円で譲り受けた場合、不動産を贈与されて所有者が変わったことを登記する必要があります。
これを「贈与登記」といいます。
贈与登記の費用は、自分で申請する場合には、【固定資産税評価額×2%】の登録免許税のみがかかります。
例えば、土地と家屋の固定資産税評価額が合計1,000万円の場合、登録免許税は20万円となります。
また、贈与登記を司法書士に依頼した場合には、司法書士への報酬として、4万円程度の費用がかかります。
無償譲渡契約書(贈与契約書)の書類作成費がかかる
無償で空き家をもらう場合にも、「無償譲渡契約書(贈与契約書)」を相手方と取り交わす必要があります。
贈与によって取得した不動産の名義変更登記にも必要となるからです。
また、しっかりと書面で残さないと、後々になって問題が発覚した場合などに証拠がなくなるので、必ず契約書は作成しましょう。
契約書を作成する時には、自分に不利な内容になっていないか確認するためにも、司法書士などプロの方に作成を依頼することをおすすめします。
司法書士や行政書士に書類を作成してもらう場合の費用は、数万円程度が相場です。
なお、贈与登記までをセットで依頼する場合には10万円程度が相場となります。
修繕・リフォーム費用がかかる
「空き家差し上げます」という0円で取得できる空き家の場合、家が古かったり、長年放置されていて劣化が進んでいたりする可能性があります。
建物は人が住まなくなると空気の流れが悪くなり、湿気が溜まることで一気に劣化が進みます。
水の流れがなければ配水管や給水管のサビも進みますし、かなり修繕やリフォームにお金がかかる可能性があります。
費用はケースバイケースですが、例えば古い家をフルリフォームする場合には、1,000万円~2,000万円かかる場合もあります。
無償譲渡してもらう前に、修繕・リフォームが必要なのか、いくらぐらいかかりそうなのかをしっかり見極めることが大切です。
「空き家差し上げます」の裏に隠れている3つのリスク
「空き家の値段は0円でも税金や諸費用が結構かかる」では、空き家をタダで取得する場合にも、それなりに諸費用がかかってくることをお伝えしました。
さらに、無償譲渡物件ならではの「リスクは無いの?」という方もいらっしゃることでしょう。
結論から言うと以下のリスクが存在します。
ここからは、「空き家差し上げます」に隠されたリスクについて解説していきます。
大掛かりな修繕やリフォームが必要な場合が多い
タダで手放したい空き家は「買い手が付かない空き家」ともいえるため、老朽化していたり設備が古くなっていたりする可能性が高くなります。そのため、大掛かりな修繕や不利フォームが必要なケースが多いでしょう。
家が老朽化していたり損傷していたりする場合には、大掛かりな修繕が必要になります。また、空き家が古い場合には、仮にそれほど損傷・劣化が無かったとしても、設備が古く「そのまま住む」には暮らしにくいケースも多いでしょう。
空き家を取得した後に、修繕やリフォームをするつもりで、その資金を予算に入れておくことをおすすめします。
費用は、「空き家の値段は0円でも税金や諸費用が結構かかる」でも触れましたが、ケースによって異なるとはいえ、1,000万円~2,000万円程度の費用がかかることもあります。
契約トラブルが発生する可能性がある
空き家の無償譲渡では実際の契約は個人間で交わすことがほとんどとなりますが、個人間取引では契約トラブルが発生する可能性があるため、注意が必要です。
通常の不動産仲介では、売りたい人と買いたい人の間に不動産会社が入って、取引を仲介してくれます。
法的な制限などさまざまな専門知識やトラブル事例を熟知している担当者が間に入ってくれるため、事前に認識の齟齬などが起こりにくく、トラブルが起こらないような契約を結ぶことができます。
しかしながら、空き家をタダで譲渡契約する場合には、そうした仲介業者無しで個人間で契約を行うため、契約トラブルに関するリスク管理も自分たちで行わなければなりません。
素人同士で知識がないままカタチだけの契約書を作ってしまうと、後になって問題が発生する可能性も否定できません。
・「完全無料で空き家がもらえる」と思っていたら、贈与税や登記費用など多額の出費がかかった
・農地付き空き家をもらえるはずだったが、農地法の制限により取得できないことが分かった
・新しい建物を建てることができない「再建築不可の土地」であることが後で分かった
・隣の土地との境界線について、隣人が違う認識を持っていることが分かった
・思っていたよりも固定資産税が高く、維持費が高い
・シロアリ被害で家がひどい状況であることが後で分かった
・近所の人から事故物件であることを伝えられた
こうした契約トラブルを事前に防ぐためには、契約書を作成する段階でプロの専門家に相談し、自分に不利にならないような形で契約書を作成してもらう必要があるでしょう。
自分がその家を手放す場合にも苦戦する可能性が高い
「空き家差し上げます」でタダで譲渡してもらった場合、何十年か後に自分が手放したい時にも苦戦する可能性が高いでしょう。
手放したいのになかなか貰い手が見つからないリスクがあります。
「0円でも手放したい」という物件は買い手が付かない物件なので、立地にあまり恵まれていないケースがほとんどでしょう。
現に、0円譲渡物件は、空き家率が高い地域に多く存在しています。
空き家が多いエリアや住みたい人が少ない地域の無償譲渡物件をもらっても、いざ自分が手放したい場合にも、貰い手がいなくて途方にくれてしまう可能性が高いのです。
無償譲渡物件に飛びつく前に、冷静に、将来の見通しもよく考えた上で判断することをおすすめします。
「空き家差し上げます」の成功例・失敗例
最近話題の空き家の無償譲渡ですが、ここまで説明した通り、タダで空き家をもらえると言っても諸費用はかかりますし、リスクもあります。
無償譲渡物件をもらって成功するケースもありますが、失敗するケースも少なくない点に注意が必要です。
ここからは、「空き家差し上げます」物件の成功事例と失敗事例について解説していきます。
「どうしたら成功するのか」「何がきっかけで失敗してしまうのか」を考えながら、ここで紹介するケーススタディを読んでみてください。
成功事例(東京・奥多摩町の空き家バンク制度)
東京都の最西部に位置する西多摩郡奥多摩町は、東京でも空き家が多いエリアです。
こうした空き家を活用して移住者を増やすための取り組みとして、2020年4月から「0円空き家バンク」という制度がスタートしています。
2010年度から同様の空き家活用事業を手掛けている奥多摩町では、既に、空き家を活用してカフェをオープンさせた移住者などの事例があります。
奥多摩町は、空き家率が高いとはいえ東京都に位置しており、新宿までJRで1時間半で着く便利な場所にあります。トレッキングや山登り、川遊び、釣りなどレジャーも多く、子どもと一緒に移住したい魅力ある町として人気です。
失敗事例(土地の法的規制を理解していなかった)
無償譲渡物件でよくある失敗事例として、知識がないままに進めてしまい、取得した空き家(家屋+土地)を希望通りに活用できなかったというケースがあります。
土地にはいくつかの法的規制があり、どこでも自由に活用できる訳ではありません。
例えば、それぞれの場所ごとに「用途地域」が設定されており、その地域に建てられる建築物が決まっています。
失敗事例としては、古民家カフェを開業するために無償譲渡物件を取得したものの、その地域が「第一種低層住居専用地域」に該当するため、希望する広さのお店をオープンできなかった…というケースがあります。
さらに、店舗を運営するには一定の設備や耐震化改修などが必要になり、リフォーム費用も想定以上にかかります。
通常の不動産売買では、不動産仲介業者が用途地域など法的規制についても熟知しているので、売買を進める中で気付けた失敗でしょう。
このケースのように、個人間で譲渡手続きを進める場合には、全て自己責任になってしまうため注意が必要です。
このような失敗を避けるためには、自分で必要な情報をしっかり収集するか、物件取得を進める中で専門家の意見もしっかり聞くことが大切です。
失敗事例(田舎に馴染めなかったケース)
田舎暮らしに憧れて「空き家差し上げます」と募集していた物件をもらい受けたものの、町に馴染めずに失敗してしまう事例もあります。
実際に田舎暮らしを始めてみると、「スーパーが遠くて買い物に行くのが大変」「もともと住んでいる人たちと馴染めない」「ゴミ出しに独特のルールがある」「週ごとにゴミ置き場の掃除をしなければならない」など、想定していなかった不便な状況が見えてくることがあります。
このようなケースの場合で、過疎化が進んでいて需要が少ない地域の場合、売却しようと思っても売れず、無償譲渡物件としても貰い手が見つからない可能性があります。
無償譲渡物件を取得する場合には、「長くその土地に住み続ける覚悟があるのか」「自分が手放す場合にはどうするのか」まで深く考えた上で判断することをおすすめします。
0円で取得できる空き家の探し方4つ
ここからは「空き家差し上げます」のような0円でもらえる空き家をどこで探すのか、4つの方法を解説していきます。
【おすすめ】「0円空き家バンク」を実施している自治体を探す
0円で住める空き家を探す場合、もっともおすすめなのが、自治体があっせんしている空き家活用プロジェクトを探して、その制度を利用する方法です。
最近では、さまざまな自治体が過疎化や空き家率増加に悩み、移住者を誘致する施策を行っています。その中で、「0円空き家バンク」のように移住者に無料で空き家を提供している自治体も増えています。
例えば、富山県上市町は、専用ポータルサイトを立ち上げて、0円(土地・建物とも無償譲渡)の空き家情報を掲載しています。
こうした自治体の制度を利用するメリットとしては、個人間だけのやりとりではなく自治体が間に入るためトラブルが少ないこと、そして自治体が街を上げて移住者を歓迎していること、0円譲渡以外にも移住者向けの補助金制度が整備されているケースが多いことです。
なお、現在「0円空き家バンク」を行っている自治体は、富山県上市町や東京都西多摩郡奥多摩町など限られた自治体だけです。
今後増える可能性はあるので、「地域名+0円空き家バンク」などで検索してみましょう。
完全にタダで空き家をもらえる無償譲渡物件の件数は少ないですが、ぜひ探してみることをおすすめします。
【おすすめ】「空き家バンク」を利用する
「【おすすめ】「0円空き家バンク」を実施している自治体を探す」で紹介した「0円空き家バンク」のように無償譲渡とは限らないものの、各自治体が空き家の活用を目的として設置している「空き家バンク」が各地に存在しています。
こうした「空き家バンク」を利用すれば、無償とは言わないまでも、百万円以下など破格の価格で購入できる空き家を見つけることができます。
国土交通省の「空き家・空き地バンク総合情報ページ」から、自治体ごとに運営する空き家バンクのホームページを確認できます。
また、公募により選定されて運営されている「LIFULL HOME’S空き家バンク」「アットホーム空き家バンク」を使えば、自治体を横断してカンタンに検索できるので便利です。
民間の空き家マッチングサービスを利用する
民間が運営している空き家マッチングサービスを利用して無償譲渡物件を探すこともできます。
中でも、掲載した物件の9割弱がマッチングに成功している「みんなの0円物件」というサービスが有名で、全国の0円物件情報が875件以上掲載されています(2023年12月確認時点)。
その他、0円〜100万円未満の「空き家売ります」情報が豊富な「家いちば」や「Sumai空き家」でも、無償譲渡物件や格安物件を見つけることができます。
このようなマッチングサービスを使うと、全国の情報を横断して効率的に入手できるメリットがあります。
一方で、自治体が発信している情報ではないため、信頼できない情報が掲載されている可能性があります。
権利関係に問題がないかなど、トラブルが無いかしっかり自分で確認しなければならないのがデメリットといえるでしょう。
直接自分の足で見つける
マッチングサイトを利用するのではなく、自分の足で見つけるという方法もあります。
直接町を歩いてみることで、「このあたりでカフェをやりたいな」「この古民家を活用したら自分がイメージする住まいが実現できそうだ」などとインスピレーションを感じることがあるでしょう。
空き家に、管理している不動産会社の情報があれば、その会社に連絡してみましょう。
所有者が分からない場合には、法務局に請求すれば登記簿で持ち主の氏名や住所を調べることができます。
また、周囲の人や商店街、自治体に、状況を聞いてみると良いでしょう。
実際に空き家の周りを歩き回ってみることで、過疎化の状況や周辺環境、移住者に対する住民や自治体の対応などさまざまな情報を得ることができるでしょう。
「空き家差し上げます」で後悔しないためのポイント
最後に、「空き家差し上げます」物件(無償譲渡物件)で注意すべきポイントについて解説していきます。
後悔しないためのポイント1:無償譲渡でも必ず契約書を用意する
事後のトラブルを避けるために、0円で空き家を譲り受ける場合でも必ず「無償譲渡契約書(贈与契約書)」を作成しましょう。
第三者から譲り受ける場合はもちろん、相手が親族や知っている人でも必ず作成することをおすすめします。
通常の不動産売買では不動産会社が仲介を行いますが、0円空き家の譲渡では、契約は「個人間で契約書を交わすだけ」というケースが多く見られます。
空き家バンクやマッチングサービスも、物件紹介までは行っても「あとは自己責任で」ということがほとんどなのです。
専門知識のない個人が法的に有効な契約書を作るのは難しいため、最悪の場合、「書類に不備があり譲渡を無効にされた」というケースも起こりえます。
こうした失敗を起こさないためには、契約書を作る際に弁護士や司法書士など専門家に依頼するか、0円を諦めて不動産仲介を利用して中古物件を購入するか、どちらかがおすすめです。
後悔しないためのポイント2:自分が空き家を手放す時のイメージを描いておく
空き家を手に入れてリフォームなどをして活用したのち、10年後20年後に自分が手放すときのイメージもしっかりとしておきましょう。
例えば、過疎化が進む一方の町の空き家を取得してしまうと、将来的にさらに不動産の価値が下がる可能性があります。
家族でその地に今後も定住し続けるというケースなら問題ありませんが、また別の場所に移住したくても不動産をもらってくれる相手がいないという状況になりかねません。
一方で、地域を挙げて自治体への移住者を増得続けており活性化している町ならば、将来的に不動産を手放したい場合に売却先が期待できるでしょう。
後悔しないためのポイント3:お試し移住をしてから決める
空き家を取得して見知らぬ土地に移住する場合には、事前に移住する町にお試し移住してから決定するとミスマッチを防ぐことができるでしょう。
田舎暮らしに憧れて移住したものの、理想と実際の田舎のミスマッチが起きてしまう人は多いようです。
ミスマッチを防ぐために、空き家を取得する前にその町に「お試し移住」をしてみて、実際にどのような暮らしになるのか、町の人とのコミュニケーションはどうかなどを確かめることをおすすめします。
空き家の無償譲渡以外の選択肢も考えてみよう
ここまで「空き家差し上げます物件」について解説してきました。
0円で家がもらえるとは言ってもメリットだけではないということが分かったのではないでしょうか。
譲渡税などの税金がかかる上に、高額な修繕・リフォーム費用がかかるケースが多いのが、無償譲渡物件です。
さらに、土地の価値もない(=立地が悪い)可能性もあります。
そのため、場合によっては、タダでもらえることにこだわらずに、他の選択肢を考えてみることをおすすめします。
低予算の中古住宅を購入する(不動産仲介会社がいた方が安心)
一つ目の選択肢は、タダ(無料)の空き家ではなく、低予算の中古住宅を不動産仲介を通して購入する方法です。
不動産情報サイトを見ると、500万円以内の中古一戸建ての特集ページなどが見つかります。
無償譲渡物件をもらった場合も「譲渡税」で数百万円かかるケースはあるので、それほど費用面では差が出ないかもしれません。
不動産仲介会社を通しての不動産売買なら、売買契約書の作成や権利関係の調査、土地の法律規制なども全て不動産会社が面倒を見てくれるので安心です。
無償ではなく低予算の中古住宅もぜひ検討してみることをおすすめします。
良い物件が見つからないという方には、未公開物件や値下げ情報を教えてくれる「タウンライフ不動産」の一括請求サービスも便利でおすすめです。
未公開物件充実!希望条件に合わせて一括請求
長期間賃貸で新築に住める自治体の制度を利用する
もうひとつの選択肢として、空き家バンクとはまた違った自治体の制度を活用する方法もあります。
自治体によっては、長期間賃貸で住み続ければ土地と住宅を無償譲渡する取り組みを行っている自治体があります。
例えば、宮城県七ヶ宿町では、20年新築賃貸住宅に住むと土地と建物が無償で譲渡される「地域担い手づくり支援住宅」という制度があります。家族構成に合わせて間取りを決めることもできるようです。
このような新築住宅に住める取り組みなどを活用できれば、修繕・リフォーム費用もかからず、快適な暮らしをスタートさせることができて安心です。
今後も、移住者を増やすためにこうした取り組みを始める自治体が増えるかもしれません。自治体の制度にアンテナを張っておくことをおすすめします。
まとめ
本記事では「空き家差し上げます物件(無償譲渡物件)」について解説してきました。
最後に、要点を簡単にまとめておきます。
「空き家差し上げます」物件とは
・「土地と建物の無償譲渡」という取引に該当=タダ(無料)で土地と建物をあげること
・自治体の「空き家バンク」や「みんなの0円物件」のようなマッチングサービスで見つかる
・「空き家率」が高いエリア(長野県軽井沢町、栃木県那須町、静岡県熱海市、千葉県勝浦市など)に多い
なぜ0円?「空き家差し上げます」が実在する理由
・【前提】空き家を売却しようとしても売れなかったから
・空き家を解体するには100万円以上の費用がかかるから
・空き家は持っているだけで数十万円の維持費がかかるから
・さらに法改正で固定資産税が6倍に上がる可能性があるから
空き家の値段は0円でも税金や諸費用が結構かかる
・贈与税
・不動産取得税
・贈与登記
・無償譲渡契約書(贈与契約書)の書類作成費
・修繕・リフォーム費用
「空き家差し上げます」の裏に隠れている3つのリスク
・大掛かりな修繕やリフォームが必要な場合が多い
・契約トラブルが発生する可能性がある
・自分がその家を手放す場合にも苦戦する可能性が高い
0円で取得できる空き家の探し方4つ
・「0円空き家バンク」を実施している自治体を探す
・「空き家バンク」を利用する
・民間の空き家マッチングサービスを利用する
・直接自分の足で見つける
「空き家差し上げます」で後悔しないためのポイント
・無償譲渡でも必ず契約書を用意する
・自分が空き家を手放す時のイメージを描いておく
・お試し移住をしてから決める
空き家を無償でもらえるなんて夢のような話ですが、実際には税金がかかったり、高額な修繕・リフォーム費用がかかったりして、数百万円の出費になるケースもあります。
「空き家差し上げます」という謡い文句につられずに、自分が本当に住みたい場所で、住みたい家を見つけることがおすすめです。
不動産売却を考えている方は、不動産一括査定サイトがおすすめです。
査定額をより正確に出したい場合は、不動産会社1社のみではなく、少なくとも2〜3社まとめて査定を依頼するようにしましょう。
1社だけの査定額だと、相場よりも低い価格で売却して、損をしてしまうかもしれません。
2~3社に依頼すれば、数字を照らし合わせていくらが相場なのかチェックができ、売り出し価格を決める際の参考になります。
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