【2024年5月】不動産相続手続き3つのパターン|具体的な方法、必要書類、費用まで

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不動産相続手続きの流れ

不動産を相続の手続きとは、相続する土地や家の名義を亡くなった人から相続する人に書き換える「相続登記」を指します

法務局が管理する登記簿には、不動産の所有者が登録されてますが、これは所有者が亡くなったからといって自動的に書き換わることはありません。

新しい所有者が、名義変更の手続き=相続登記をする必要があるのです。

この相続登記は、自分ですることもできますし、司法書士に依頼することもできます。

手続きの流れは以下の通りです。

不動産の相続手続きは、必要書類が非常に多い上に大変に感じることも多いでしょう。

複雑な手続きをスムーズにするためには税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

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相続登記は、現在のところは義務ではありませんが、2024年4月1日からは義務化されます。

そうなると、相続人は相続により不動産の所有権を取得したことを知った日、または遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記の申請をしなければならず、それを怠ると、10万円以下の過料が科される可能性が出てくるのです。

そこでこの記事では、不動産の相続手続きについてわかりやすく説明します。

最後まで読めば、不動産相続の手続きについてひと通りのことがわかるでしょう。

この記事で、あなたが無事に相続登記をできるよう願っています。

【目的別】不動産相続の相談先6つ!費用、利用方法、選び方など解説

家の相続税はいくらになる?計算方法・節税する方法・注意点を解説

目次

不動産の相続手続きとは

そもそも、「不動産を相続する際の手続き」とは何でしょうか?

どんな手続きが必要なのでしょう?

まずはその基本的なこと4つをご紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

不動産の相続手続き=「相続登記」

一般的に「不動産の相続手続き」というと、「亡くなった人(=被相続人)が所有していた不動産の名義を、相続人に変更すること」を指し、その手続きを「相続登記」と呼んでいます。

不動産は、その所在地や所有者などの情報を、法務局が管理する「登記簿」にそれぞれ登録されています。

これは、「わたしたちの大切な財産である土地や建物の所在・面積のほか,所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し,これを一般公開することにより,権利関係などの状況が誰にでもわかるようにし,取引の安全と円滑をはかる」(法務省「不動産登記のABC」より引用)ための制度です。

ただ、この登記簿は、所有者が亡くなっても自動的に書き換わることはありません

不動産を相続した人が名義変更の手続きをしなければ、いつまでも亡くなった人の名義のままです。

そこで、相続人は「相続登記」をする必要があるわけです。

相続登記は、正式には所有権移転登記といい、その不動産を管轄する法務局に、相続人が自分で、あるいは司法書士に依頼して申請します

登記事項証明書
出典:法務省「【参考1】 登記事項証明書(不動産登記)の見本

相続登記の必要性

2024年4月以降、相続登記は義務化されました。

実は、この相続登記は、現在(2024年1月)のところ義務ではありません。

前述したように、相続人本人が手続きしない限り所有者は亡くなった人のままですが、それでも特に罰則などはないのです。

では、なぜ相続登記が必要なのでしょうか?

それは、手続きせずに放置しておくと、以下のような困ったことが起きるリスクがあるからです。

【相続登記をせずに放置するリスク】
  • 相続した不動産を売却したくても、名義が亡くなった人のままでは売れない
  • 相続人が複数いる場合、誰が不動産の所有者になるかを定めないままだと、その間に相続人のうち誰かが亡くなる可能性がある
    →そうなると、その人からの相続も発生する=相続人が増えてしまって、相続が複雑になる
  • 同じく相続人が複数いて相続登記をしない場合、最初は「この不動産はAさんが相続する」と口約束していても、あとから他の相続人の気が変わって、「自分にも権利がある」などと言い出される恐れがある
  • 同じく相続人が複数いる場合、相続人の誰かが認知症などになると、そのあとで不動産の所有者を決めて相続登記しようとしても、本人の意思が確認しづらくなってしまう

このようなことがないように、不動産の所有者が亡くなったら、早めに「遺産をどうわけるか、不動産は誰の所有にするか」の話し合い(=遺産分割協議)をして、相続登記をする必要があるのです。

2024年4月1日から相続登記が義務化される

さて、前項では今のところ相続登記は義務ではない、罰則もないといいましたが、実は2024年4月1日から義務化されることになっています。

具体的には、以下のように変わります。

  • 相続人は、相続により不動産の所有権を取得したことを知った日、または遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない
  • 正当な理由なく申請をしなかった場合は、10万円以下の過料が科されることがある
    →正当な理由とは、「相続登記を放置したために相続人が非常に増えてしまい、相続人の把握や必要な資料の収集に時間がかかる」「遺言書があるが、その有効性や遺産の分け方などで争っている」「申請すべき相続人自身が重病になって手続きできない」などです

親族が亡くなると、さまざまな手続きが必要になって忙しいとは思いますが、上記のような義務と罰則が課されますので、できるだけ速やかに不動産の所有者を決めて、相続登記をしましょう。

相続登記以外にも手続きが必要な場合がある

ちなみに、前述したように、誰かが亡くなると相続登記以外にもしなければならない手続きがいろいろと発生する可能性があります。

主な手続きを、時系列でまとめましたので、以下を見てください。

期限手続き
期限が決まっているもの期限が決まっていないもの
7日以内・死亡診断書の取得
・死亡届の提出
・火葬許可証の取得
・公共料金等の解約/名義変更
・金融機関・有価証券等の名義変更
・生命保険金の請求


・遺言書の調査・検認
・相続人の調査→確定
・相続財産の調査
・遺産分割協議の開始
 →遺産分割協議書の作成


相続登記
14日以内・住民票の抹消届
 →除籍の申請
・世帯主変更届の提出
・年金受給停止の手続き
・健康保険の資格喪失手続き
 →健康保険証の返却
・介護保険の資格喪失届提出
 →介護保険被保険者証の返却
3ヶ月以内・相続放棄または限定承認
・放棄期間の延長
4ヶ月以内・故人の所得税の準確定申告
10ヶ月以内・相続税の申告
1年以内・遺留分侵害額請求

すべきことが多くて大変ですが、このスケジュールを確認しながら、忘れずに手続きを進めてください。

不動産の相続手続きは自分でもできる

不動産の相続手続き=「相続登記」で触れましたが、不動産の相続手続き=「相続登記」は、自分ですることもできます。

ただ、必要書類が多く申請書の作成が手間なので、専門家に代行してもらう人も多くいます。

その場合は、登記の専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。

そこで、「自分で手続きしたいけれど、できるかどうか不安」という人のために、相続登記を自分でできるケースと、司法書士に依頼したほうがいいケースを挙げておきましょう。

自分でできるケース

まず、相続登記を自分でもできるケースとしては、以下のようなものが考えられます。

【相続登記を自分でできるケース】

スクロールできます
相続人がわかりやすい場合相続人が配偶者のみ、子どものみ、配偶者と子どものみなどわかりやすい場合は、必要書類の準備が比較的簡単なので、手続きが進めやすいでしょう。
相続人が平日の日中に
自由に動ける場合
必要書類を集めるためには、市町村役場を回ったり、法務局に行ったりと、平日昼間に何度も動かなければなりません。
特に、相続不動産が遠方にある場合は、そちらの法務局に行く必要もあるので、それが可能かどうかが重要です。
相続人が書類の作成、
読み解きを苦にしない場合
誰が相続人なのかを確定させるためには、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本を読み解かなければなりません。
また、相続登記の申請書類など、書類を作成する必要もあるので、これらの作業が苦手ではない人なら、自分で手続きできるでしょう。

もし自分で手続きを進めてみて、途中で「やっぱり無理だ」となれば、あらためて司法書士に依頼することもできます。

上記に該当する人は、まず自分で取り掛かってみるのも良いでしょう。

司法書士に依頼したほうがいいケース

一方、自分で手続きするのは難しく、司法書士に依頼したほうがいいと思われるのは以下のケースです。

【相続登記を司法書士に依頼したほうがいいケース】

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相続人が多く
相続が複雑な場合
相続人が多いと、相続が複雑になります。
また、申請の際に「相続関係説明図」を作成しますが、それも複雑で難しくなるので、専門家である司法書士の手を借りるといいでしょう。
相続人が配偶者や
子ども以外の場合
相続人が兄弟姉妹、その子どもなどになると、集めなければいけない戸籍の範囲が広がり、場合によっては何ヶ所も遠方に出かける必要が生じます。
また、遺言書によって親族以外の人が不動産の所有者になる場合は、「相続」ではなく「遺贈」になり、その場合も、遺言執行者が定められていないと相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明など、集める書類が多いため、自分で行うのは大変です。
相続人の中に連絡が
取れない人がいる場合
遺産分割協議には全員が参加する必要があり、全員の同意が必要です。
連絡が取れない人がいる場合、司法書士に依頼すると連絡先を調べて連絡をとってくれます。
相続人同士が
仲が悪い場合
同じく遺産分割協議では、話し合いで相続財産をわける必要がありますが、相続人同士の仲が悪いと話し合いがスムーズに進みません。
また、必要書類集めなど、手続きを相続人間で分担したい場合も、非協力的な人が出てくるでしょう。
第三者である司法書士が間に入ったほうが、うまく進む可能性が高まります。
相続不動産の名義が
被相続人ではない場合
相続不動産の名義を確認したら、亡くなった人ではなくその親など、さらに前の世代の名義のままになっている例もあります。
その場合、名義人の世代までさかのぼって相続人をすべて確認しなければなりません。
中には昔の法律が適用されるケースもあり、法律に詳しくない人が調べるのはかなり大変な作業でしょう。
相続不動産が
遠方にある場合
相続人の住んでいる場所と相続不動産が遠く離れている場合、その地域の法務局まで手続きに行かなければなりません。
相続登記では、何度か法務局に行く必要が出てきますので、そのたびに遠方に出向くより、司法書士に代行してもらったほうがスムーズに進むでしょう。
相続不動産が
複数ある場合
複数の不動産を相続する場合、相続登記をまとめてすることはできません。
そもそも登記は、土地と建物も別々に登録されているため、不動産の数だけ申請が必要です。
特に、離れた場所にある複数の不動産を相続する場合は、各地に出向いて手続きをするので、時間も手間もかかってしまいます。
相続登記を
急いでいる場合
相続した不動産を売却したい場合など、名義変更を急ぐ人も多いですが、自分で手続きすると書類集めだけでも時間がかかります。
また、申請書類にミスがあると、法務局から修正を求められ、さらに遅れてしまいます。
その点、司法書士なら、相続登記に慣れているためミスもなく、迅速に進めてくれるでしょう。

このような場合でも、自分で手続きできないということはありません。

時間がかかったり、ミスをしたりすることはあるでしょうが、法務局などに相談しながら進められるでしょう。

ただ、無理して自分で手続きするよりも、司法書士に頼んだほうがミスなくスムーズに進められるはずです。

依頼するか迷っているなら、無料で相続の相談を受けている司法書士事務所もありますので、一度相談してみてください。

その結果、費用なども含めて納得できたら依頼するといいでしょう。

【相続関係説明図の見本】

相続関係説明図
出典:法務局「不動産登記の申請書様式について

【遺産分割協議書の見本】

遺産分割協議書
出典:法務局「不動産登記の申請書様式について

不動産相続手続き 3つのパターン

不動産を相続する場合、「遺言書があるかないか」「財産の分け方を話し合いで決めるか、法律通りに分けるか」によって、相続のしかたが以下の3パターンに大きく分けられます。

どの相続かによって、手続きの流れや必要書類が多少異なりますので、まずはこの3パターンについて説明しましょう。

遺言書による相続

誰かが亡くなって相続が発生した際に、まず最初にすべきなのが遺言書の確認です。

遺言書があれば、相続は原則としてそれに従って相続が行われるからです。

この場合の手続きは、以下の流れで行います。

【遺言書による相続の流れ】
  1. 登記申請書の作成:法務局(登記所)に提出する書類を作成します
  2. 登記申請書の提出:法務局(登記所)に書類を提出します
  3. 登記完了:法務局(登記所)から登記完了証・登記識別情報通知書が交付されます

もし、遺言書で指定された相続分が、遺留分(=法律上相続人に確保されている最低限の相続財産)より少ない場合は、遺留分の請求が可能です。

遺留分は、相続財産全体に対して以下の割合で認められます。

【法定相続分・遺留分の割合】

スクロールできます
被相続人に対する
法定相続人の関係
法定相続分遺留分
配偶者のみ全部2分の1
子のみ全部
(複数の場合は均等に割る)
例)子が2人:2分の1ずつ
2分の1
父母など
直系尊属のみ
全部
(複数の場合は均等に割る)
例)父母:2分の1ずつ
3分の1
(複数の場合は均等に割る)
兄弟姉妹のみ全部
(複数の場合は均等に割る)
例)きょうだいが3人:3分の1ずつ
なし
配偶者+子配偶者:2分の1
子:2分の1
(子が複数の場合は2分の1を均等に割る)
配偶者:4分の1
子:4分の1
(子が複数の場合は4分の1を均等に割る)
配偶者

父母など直系尊属
配偶者:3分の2
直系尊属:3分の1
(直系尊属が複数の場合は3分の1を均等に割る)
配偶者:3分の1
直系尊属:6分の1
(直系尊属が複数の場合は6分の1を均等に割る)
配偶者+兄弟姉妹配偶者:4分の3
きょうだい:4分の1
(きょうだいが複数の場合は4分の1を均等に割る)
配偶者:2分の1
兄弟姉妹:なし

たとえば、遺言書で「遺産5,000万円のうち、妻には500万円、ひとり息子には100万円」と書かれていても、妻と息子は遺留分として遺産の4分の1=1,250万円を、それぞれ請求することができます。

また、「家族ではないAさんにすべて遺す」という場合も、法定相続人には遺留分を請求する権利があります。

さらに、たとえ遺言書があっても、遺言書に記載されてる相続人すべてが同意すれば、遺言書の内容に従わず、遺産分割協議をして財産の分け方を決めることも可能です。

遺産分割協議による相続

遺言書がない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議(=話し合い)を行って、相続財産の分け方を決めるのが一般的です。

この場合、財産をどう分けるかは相続人の自由ですが、相続人すべてが同意する必要があります

同意したら、遺産分割協議書を作成して、相続を確定させます。

手続きは、以下の5ステップです。

【遺産分割協議による相続の流れ】
  1. 戸籍関係書類の取得
    • 相続開始が始まったことを証明し、法定相続人を特定するため、戸籍の記録事項証明書(戸籍謄抄本、除籍謄抄本)を取得します
       
  2. 遺産分割協議・協議書の作成
    • 遺産分割協議(=話し合い)で不動産など財産の所有者を確定します
    • 確定したら、その内容を書面化するため遺産分割協議書を作成します
       
  3. 登記申請書の作成
    • 法務局(登記所)に提出する書類を作成します
       
  4. 登記申請書の提出
    • 法務局(登記所)に書類を提出します
       
  5. 登記完了
    • 法務局(登記所)から登記完了証・登記識別情報通知書が交付されます

法定相続

遺言書がなく、遺産分割協議も行わない場合は、民法で定められた法定相続分に従って、相続財産を分割します。

法定相続分は以下です。

被相続人に対する
法定相続人の関係
法定相続分
配偶者のみ全部
子のみ全部
(複数の場合は均等に割る)
例)子が2人:2分の1ずつ
父母など
直系尊属のみ
全部
(複数の場合は均等に割る)
例)父母:2分の1ずつ
兄弟姉妹のみ全部
(複数の場合は均等に割る)
例)兄弟姉妹が3人:3分の1ずつ
配偶者+子配偶者:2分の1
子:2分の1
(子が複数の場合は2分の1を均等に割る)
配偶者

父母など直系尊属
配偶者:3分の2
直系尊属:3分の1
(直系尊属が複数の場合は3分の1を均等に割る)
配偶者+兄弟姉妹配偶者:4分の3
きょうだい:4分の1
(兄弟姉妹が複数の場合は4分の1を均等に割る)

この場合の手続きは、以下の流れで進めます。

【遺産分割協議による相続の流れ】
  1. 戸籍関係書類の取得:相続開始が始まったことを証明し、法定相続人を特定するため、
              戸籍の記録事項証明書(戸籍謄抄本、除籍謄抄本)を取得します
  2. 登記申請書の作成:法務局(登記所)に提出する書類を作成します
  3. 登記申請書の提出:法務局(登記所)に書類を提出します
  4. 登記完了:法務局(登記所)から登記完了証・登記識別情報通知書が交付されます

不動産の分け方 4つの方法

前章では、相続のしかたに3つのパターンがあることを説明しました。
が、それとはまた別に、不動産を相続した場合は、それをどのように分けるかを考える必要があります。
不動産をそのまま誰かひとりが相続するのか、何人かで分けるのか、あるいは売却してその代金を分けるのか、といったことです。

この分け方には、以下の4つの方法があります。

遺産分割協議では、どの方法で分けるかを決める必要がありますので、これについても説明しておきましょう。

現物分割

現物分割は、不動産をそのまま相続する方法です。

たとえば、亡くなった人が住んでいた家と土地を長男が相続し、畑は次男が相続する、といったケースです。

この場合、それぞれの不動産について相続登記で名義を変更すればいいので、手続きは難しくありません。

あるいは、ひとつの不動産として登記されている土地を、分割して登記し直した上で、それぞれを相続することもできます。
(分割して登記し直すことを「分筆」と言います。)

ただ、相続人それぞれが相続する財産に不公平が生じる可能性があります。

たとえば前述のケースで、家と土地が5,000万円、畑が1,000万円、現金などが2,000万円分だった場合、現金などを次男がすべて相続しても、長男の相続額は5,000万円、次男は3,000万円で2,000万円の差がついてしまいます。

これを話し合いで相続人全員が納得できればいいのですが、不満に思う人がいると、相続がスムーズに進まない可能性があります。

その場合は、他の分け方も検討する必要があるでしょう。

代償分割

代償分割は、不動産を相続した人が、他の相続人に対して相続の不足分を現金で支払う方法です。

たとえば、親が遺した5,000万円の不動産があり、子どもふたりがいる場合を考えてみましょう。

本来なら、それぞれ2,500万円ずつ相続するところですが、ひとりが不動産をそのまま相続し、そのかわりにもうひとりに対して自分のポケットマネーから代償金を支払うのが代償分割です。

この代償金は、法定相続分にのっとって決められることが多いようですが、双方の合意があればいくらでもかまいません。

上記の例で言えば、法定相続分を代償金とするなら2,500万円ですが、お互い話し合って納得できれば、それより少なくても多くてもいいのです。

換価分割

換価分割とは、相続不動産を売却して、その売却代金を相続人間で分ける方法です。

相続人間で相続財産を平等に分けたい場合や、その不動産を相続人の誰も欲しがらない場合、あるいは相続税が多額で自前では用意できない場合などにこの方法がとられることが多いようです。

換価分割をする手順は、以下の4ステップです。

  1. 遺産分割協議書に、現金化した後の分け方を決めておく
  2. 不動産をいったん相続登記する
  3. 不動産を売却する
  4. 売却代金を、遺産分割協議書にしたがって分割する

「②不動産をいったん相続登記する」のは、不動産を売却できるのはその所有者だけだからです。

売却するためには、ひとまず誰かが所有者にならなければなりません。

その際に、相続人の誰かひとりが代表として相続登記をする方法と、相続人みんなの共有名義で相続登記をする方法があります。

ひとりの名義のほうが手続きは何かとスムーズですが、その場合、最後に売却代金を分ける際に、名義人から他の相続人への「贈与」とみなされて、贈与税を課せられる恐れがあります。

それを避けるためには、最初の段階で遺産分割協議書に、「換価分割すること」「そのためにひとりの名義にしたこと」「売却代金は相続人間で分割して受け取ること」をあらかじめ明記しておいてください。

共有名義

共有名義は、不動産を複数の相続人の共有名義にして相続する方法です。

この場合、前述した「分筆」とは異なり、不動産はひとつのままです。

ひとつの不動産に対して、複数の相続人を名義人として相続登記します。

ただ、その際には遺産分割協議でそれぞれが所有する割合=持分割合を決め、それも登記する必要があります。

この方法は、不動産を売却せずに均等に(あるいは法定相続分通りに)相続したい、という場合などには一応適していると言えるでしょう。

しかし、共有名義だと、売却する場合は全員の同意が必要になります。

また、名義人の誰かが亡くなると、持分が相続されるため、権利が複雑になる恐れもあるのです。

将来的な面倒を避けるためには、できれば共有名義ではなく別の方法で不動産を相続したほうがいいでしょう。

不動産相続手続きの進め方

不動産 相続 手続き

さて、不動産相続のパターンがわかったところで、手続きの進め方をより具体的に説明していきます。

流れは以下の通りです。

くわしく説明します。

遺言書の有無を確認する

誰かが亡くなって相続が発生した際に、最初にすべきことは、「遺言書があるかどうかの確認」です。

前述したように、遺言書がある場合は、その内容が法定相続や遺産分割協議より優先されるからです。

もし「遺産分割協議をしたあとで、遺言書が見つかった」となると、あらためて相続財産を分割し直さなければいけなくなるかもしれません。

そのようなことがないよう、最初によく調べましょう。

「父は亡くなる前に、遺言書を書いてあるといっていたけれど、見つからない」という場合は、その遺言書が公正証書になっていれば、公証役場で調べることができます。

公証役場には「遺言検索システム」があり、全国どこからでも公正証書遺言を検索できるようになっているのです。

最寄りの公証役場に、以下の書類を持って行って検索請求をすれば、無料で調べてもらえます。

  • 遺言者が死亡した事実を証明する書類(除籍謄本など)
  • 検索を希望する人が遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本
  • 検索を希望する人の本人確認の書類(マイナンバーカード、運転免許証等の顔写真付き公的身分証明書または実印および印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの))

ただし、公正証書になっていない遺言書は、相続人が自力で探すしかありません。

相続人を確定する

遺言書の有無がわかったら、次に相続人を確定します。

遺言書があれば、そこに記載されている人が相続人になりますが、遺言書がなければ、以下が法定相続人になります。

かならず相続人になる者被相続人(亡くなった人)の配偶者
配偶者と一緒に相続人になる者

※第1順位がいない場合は第2順位、それもいない場合は第3順位が相続人になる
第1順位被相続人の子
第2順位被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)
※被相続人に世代が近い者が優先される
第3順位被相続人の兄弟姉妹
※きょうだいが死亡していればその子
法定相続人ではない者・相続放棄した者
・被相続人の内縁の者

ここで注意したいのが、「自分たちが知らない相続人がいるかもしれない」ということです。

実は亡くなった人が昔別の人と結婚していて、そちらに子どもがいるかもしれませんし、音信不通でまわりが知らないきょうだいが生きているかもしれません。

それを調べるには、亡くなった人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本をすべて取り寄せて確認する必要があります。

それらの情報も集めた上で、すべての相続人を確定させてください。

不動産情報を収集する

それと並行して、相続する不動産の情報を集めましょう。

まず、亡くなった人が所有していた不動産をすべて調べます。

配偶者や子どもが把握している以外にも、田舎に山や使っていない畑を持っていたり、親戚の家の一部が共有名義になっていたりといった可能性があるからです。

これを確認するには、毎年届く「固定資産税の納税通知書」を見てください。

納税通知書が届くということは、その地域に不動産を持っているということです。

さらに、納税通知書を送付してきた市町村の役場で、「名寄帳」の写しを取得しましょう。

名寄帳は、亡くなった人がその市町村で所有している不動産の一覧表ですので、この方法ですべての不動産が確認できます。

また、不動産の登記がどうなっているのかも重要です。

前述したように、「父親の土地だと思っていたのに、登記簿を見たら祖父の名義のままだった」ということもしばしばあります。

そうなると、手続きが複雑になり、司法書士でなければ手に負えない可能性もあります。

これは、法務局で「登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得すれば確認できます。

遺産分割協議をする

相続人と相続不動産がすべて把握できたら、いよいよ遺産分割協議です。

これには相続人全員が参加しなければなりません

相続不動産を、「不動産の分け方 4つの方法」であげたどの方法で分割するか、相続の割合は法定相続分にしたがうか、あるいは話し合いで自由に決めるか、不動産以外の財産があれば、それも誰が何を相続するか、細かく決めてください。

遺産分割協議は、全員が合意する必要がありますので、それができたら「遺産分割協議書」を作成します。

遺産分割協議書には、決まった書式はありませんが、以下のことは必須です。

  • 相続人全員が合意した上で、署名、実印を押す
  • 相続人全員の印鑑証明書を添付する
  • 遺産分割協議書は相続人の人数分作成し、それぞれが保管する

【遺産分割協議書の見本】

遺産分割協議書の例
出典:法務局

申請書類を作成する

遺産分割協議がまとまったら、相続登記の申請書類を作成します。

「登記申請書」の書式は、法務局の「不動産登記の申請書様式について」ページからダウンロードできますので、以下の見本を参考に記入してください。

【所有権移転登記申請書の見本】

不動産 登記申請書
出典:法務局

その他必要書類については、不動産相続手続きの必要書類で説明しますので、そちらを確認してください。

登記申請する

申請書が作成できたら、必要書類を添付して、法務局に提出・申請します。

ひとつ重要なのは、不動産の相続登記の場合、相続不動産を管轄する法務局に申請しなければならないということです。

相続人の最寄りの法務局ではないので、注意してください。

相続登記が完了すれば、法務局から「登記完了証」と「登記識別情報通知書(=登記識別情報を記載した書面)」が交付されます。

これらを受け取れば、不動産の名義変更、相続手続きはすべて完了です。

相続税を申告・納付する

そして、最後にもうひとつしなければならないことがあります。

それは、相続税の申告と納付です。

「相続税の申告書」は、国税庁ホームページ「[手続名]相続税の申告手続」ページからダウンロードできますので、以下の記入例にしたがって作成し、申告してください。

【相続税の申告書の記入例】

相続税の申告書
出典:法務局
相続税の申告書
出典:法務局

この申告書に、必要書類を添付して税務署に提出します。

その上で、必要があれば相続税を納めてください。

注意しなければならないのは、相続税には「相続人が相続の開始を知った日(一般的には被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内」という納付期限が定められていますので、それまでに申告・納付しましょう。

期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税を課せられる恐れがありますので、早めに納付することをおすすめします。

不動産相続手続きの必要書類

不動産相続の手続きの流れがわかりましたので、あとは必要書類についてです。

前章の手続きの中で、書類が必要になるのは「相続登記」の申請と「相続税申告」です。

それぞれの必要書類をまとめましたので、抜け漏れのないように揃えてください。

相続登記の必要書類

相続登記の必要書類は以下の通りです。

相続のパターンによって必要な書類が異なりますので、注意しましょう。

【相続登記の必要書類】

共通所有権移転登記申請書:自分で作成
被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍:出生から死亡まで連続したもの
被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票:登記簿上の住所および本籍地の記載があるもの
新しく不動産の名義人になる相続人の住民票
<必要書類が揃わない場合>
不在籍証明書、不在住証明書
登記済権利証
上申書、印鑑証明書
遺言書による相続遺言書:公正証書遺言でない場合は「検認」が必要
相続する全員の住民票:本籍地まで記載されているもの
固定資産評価証明書最新のものを、不動産のある市町村役場で取得
戸籍類一式
遺産分割協議による相続相続する全員の住民票:本籍地まで記載されているもの
定資産評価証明書:最新のものを、不動産のある市町村役場で取得
籍類一式
続人全員の印鑑証明書
法廷相続続する全員の住民票:本籍地まで記載されているもの
固定資産評価証明書:最新のものを、不動産のある市町村役場で取得
戸籍類一式

相続税申告の必要書類

相続税の申告に必要な書類は以下の通りです。

これらを揃えた上で、税務署に申告しましょう。

かならず必要本人確認書類
次のいずれかの書類
 1)被相続人のすべての相続人を明らかにする戸籍謄本
   (相続開始の日から10日以降に作成されたもの)
 2)図形式の法定相続情報一覧図の写し
   (子の続柄が実子か養子かわかるもの)
 3)上記書類のコピー
遺言書の写し、または遺産分割協議書の写し
相続人全員の印鑑証明書
配偶者控除を受ける場合申告期限後3年以内の分割見込書:申告期限内に分割ができない場合に提出する

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不動産相続手続きの費用

不動産 相続 手続き 費用

ここまで、不動産の相続手続きについて、ひと通り説明しましたが、「手続きはわかったけれど、費用はどれくらいかかるか気になる」という人もいるでしょう。

そこで最後に、不動産相続の手続きにかかる費用についても説明します。

主な費用は以下の3つです。

  • 登録免許税
  • 必要書類の収集費用
  • 司法書士への依頼費用

それぞれ詳しく見ていきましょう。

登録免許税

はじめに、登記をする際にはかならず「登録免許税」がかかります。

相続登記の登録免許税は、相続を受ける人が亡くなった人とどのような関係にあったかにより、遺言によって財産を遺贈された他人の課税額が高く設定されています。

法定相続人相続不動産の「固定資産税評価額」の0.4%
法定相続人以外の人相続不動産の「固定資産税評価額」の2%
評価額1,000万円の場合の計算例
法定相続人1,000万円 × 0.4%=4万円
法定相続人以外の人1,000万円 × 2%=20万円

固定資産税評価額は、不動産の「固定資産税納付通知書」を見れば確認できますので、それを見て計算しましょう。

登録免許税額がわかったら、その金額分の収入印紙を購入して台紙に貼り、登記申請書に添付して法務局に提出するという方法で納めます。

必要書類の収集費用

また、一連の相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、その報酬も必要です。

司法書士の報酬は自由化されていますので、事務所ごとに異なります。

特に難しくない相続であれば、おおむね5万〜10万円程度が相場ですが、相続が複雑な場合は報酬額が加算されます。

さらに、書類を取得する実費、遠方の法務局で出向いた交通費なども請求されます。

このように、司法書士の費用は、実際に手続きを進めてみないと正確にはわかりません。

司法書士事務所の中には、明朗会計を謳っていて見積もりを出してくれる事務所もありますので、最初に相談する時点で、だいたいの費用目安を聞いておくといいでしょう。

まとめ

いかがでしたか?

不動産の相続手続きについて、ひと通りのことがわかったかと思います。

では最後に、要点をまとめておきましょう。

不動産の相続手続きとは?

「亡くなった人(=被相続人)が所有していた不動産の名義を、相続人に変更すること」=「相続登記」

相続登記は2024年4月1日から義務化される

不動産の相続手続きは、自分でできるケースと司法書士に依頼したほうがいいケースがある

 【相続登記を自分でできるケース】
  ・相続人がわかりやすい場合
  ・相続人が平日の日中に自由に動ける場合
  ・相続人が書類の作成、読み解きを苦にしない場合
 【相続登記を司法書士に依頼したほうがいいケース】
  ・相続人が多く相続が複雑な場合
  ・相続人が配偶者や子ども以外の場合
  ・相続人の中に連絡が取れない人がいる場合
  ・相続人同士が仲が悪い場合
  ・相続不動産の名義が被相続人ではない場合
  ・相続不動産が遠方にある場合
  ・相続不動産が複数ある場合
  ・相続登記を急いでいる場合

動産相続手続き 3つのパターン

 ・遺言書による相続
 ・遺産分割協議による相続
 ・法定相続

不動産の分け方 4つの方法

 ・現物分割:不動産をそのまま相続する
 ・代償分割:不動産を相続した人が、他の相続人に対して相続の不足分を現金で支払う
 ・換価分割:不動産を売却して、その売却代金を相続人間で分ける
 ・共有名義:不動産を複数の相続人の共有名義にして相続する

不動産相続手続きの進め方

 ・現物分割:不動産をそのまま相続する
 ・代償分割:不動産を相続した人が、他の相続人に対して相続の不足分を現金で支払う
 ・換価分割:不動産を売却して、その売却代金を相続人間で分ける
 ・共有名義:不動産を複数の相続人の共有名義にして相続する

不動産相続手続きの進め方

 1)遺言書の有無を確認する
 2)相続人を確定する
 3)不動産情報を収集する
 4)遺産分割協議をする
 5)申請書類を作成する
 6)登記申請をする
 7)相続税の申告・納付をする

この記事で、あなたがスムーズに相続登記できるよう願っています。

著者

賃貸マンション・賃貸アパートなど、タイセイ・ハウジーが管理する全国の不動産賃貸住宅情報をご紹介しています。賃貸管理業務を通じた知識をわかりやすくお届けできればと考えています。

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